子ども時間のやり直し

植物の静かなるサイレン

  植物の静かなるサイレン

杏の木が、どうもモニリア(幼果菌核病)のようだ。

新梢の先が一節まるごと、霜に当たったかのように煮えるように萎びて枯れる。
いくつかの枝先の異変に、ちょっとした病害虫の被害かと軽視しては危ないところだった。

黒く枯れた新梢

このウイルスは空気感染するため、放っておくと近くの桃なども罹患する恐れがある。

有効な手立ては無く、ひどくなると枯れてしまったり、花木は花が咲かなくなってしまったりする。各地の桜の里などでは、すでに深刻な問題と捉えている向きもある様子。

病害虫であっても、捕殺や薬剤散布はせず、出来るだけ植物そのものの体力をつけてやり多様な生物と共存したいと考えているが、今回の相手はウイルスのため、ひとまず発症した枝を根本で切り落とし、切り口には防腐剤のトップジンを塗布、残った葉には消毒と応援を兼ねて竹酢液をふきかけた。

回収した枝は、ほんとうはウイルスごと焼却すべきだが、住宅街のため燃やすゴミとして破棄。

その後見落としか再発か、1本だけ追加で発症したものの、初夏現在のところは治っている。

画像が悪いが切り口のオレンジが防腐剤の「トップジン」

植物はウイルスと、日夜目に見えぬ戦いを繰り広げている。

静かな森林や街角のプランター、この小さな庭だけでも、人間には聞こえぬサイレンがけたたましく常に鳴っているのだと妄想すると、騒々しすぎて笑ってしまう。

実際、ウイルスが植物の葉に取り付くと、植物は人には聞こえぬサイレン(警報信号)を発するらしい。
それはほかの元気な葉たちに、バリアとなる物質を急いでつくらせたり、気孔を閉じさせたりといった、対抗措置をとるきっかけになる。
虫による食害については別に記事をあげたいと思っているが、例えばハダニが相手の場合、ハダニを食べる肉食のダニを呼びよせるSOS信号も出せるというのだから、すごい。

また、ウイルスをやっつけるべく沢山の活性酸素もつくり出す。
酸素は植物からの恩恵、地球で生きる生物には無くてはならないもの(良きもの)と思っていたが、なんと本来は、様々な物質を錆びさせてしまう毒性物質らしい。

そんな自作毒物で対抗した後には、さらに自身で解毒処理する機能も備わっているのだから、まったく何と有能なのかと感心する。
これが人々が老化防止にとありがたがる、ポリフェノールなどの抗酸化作用である。

サイレンを鳴らしたに違いない杏の木

もちろん、対抗措置だけではやっつけることが出来ないウイルス優勢の場合もある。

その時には、ウイルスは生きた細胞の中でしか増殖することができない、という性質を逆手にとり、周りの細胞を含めて自死を選択することもできる。
そう考えるとモニリアに罹った我が家の杏はもしかすると、新梢の一節を自死させることで木全体を守ったのかもしれない。よくがんばった。

メインの画像はそんな攻防戦の最中にも(だからこそ?)実をつけた、たのもしい姿。

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