古民家いろは

古民家とは。古民家の定義。

  古民家とは。古民家の定義。

古民家の定義

古民家とはなにか?
たまたま古民家に住むことになって(セルフリノベ中でまた住んでいないけど。。)、古民家についていろいろ調べた。
若いときから寺社仏閣巡りが好きで、日本全国の古建築をみてきたけど、民家にはそれほど興味がなかった。
それに「古」民家っていっても、たかだか100年くらいでしょ?
室町時代以降の「新しい」建築物にはあまり魅力を感じていなかった。
でも、古民家を手に入れてしまって、興味が出てきた。

調べてみると「古民家」には確定した定義はない。
そこで、「古民家」の定義を考察してみた。

まずは定番の広辞苑をひもといてみる。
「広辞苑 第6版」には、「古民家」が記載されていなかった。
最新の「広辞苑 第7版」には記載されていて、ここからも近年「古民家」が流行していることがわかる。

こ‐みんか【古民家】
古い民家。特に、伝統的な建築法によるもの。

広辞苑 第七版 (C)2018 株式会社岩波書店

非常にシンプルで的を射ている説明だと思う。
「伝統的な建築法」とはなにかを含め、以下考察していく。

築後50年経過していれば古民家?

検索するとこれがよく出てくる。
根拠を調べてみると、登録有形文化財の登録基準らしい。
文化財保護法では、第57条で登録有形文化財の登録について定めているけど、年数の規定はない。
おそらく、文部省(文部科学省)の告示を根拠としている。

建築物,土木構造物及びその他の工作物(重要文化財及び文化財保護法第182条第2項に規定する指定を地方公共団体が行っているものを除く。)のうち,原則として建設後50年を経過し,かつ,次の各号の一に該当するもの
(1) 国土の歴史的景観に寄与しているもの
(2) 造形の規範となっているもの
(3) 再現することが容易でないもの

登録有形文化財登録基準

しかしながら、古民家と文化財登録になんの関係がある?
文化財登録されるような素晴らしいものしか「古民家」を名乗れないというのはおかしいし、この定義は暗に「古民家とは文化財のように素晴らしいもの」という主観が含まれているように思う。
素晴らしい古民家は文化財にふさわしいけれど、そうではない古民家だって立派に古民家だ。
よって、50年というのに合理的根拠はない。
(築51年の家に住んでいる方が「古民家に住んでいます」と言うのは、なんの問題もないと思うけど。)

木造軸組工法であれば古民家?

考えるまでもないんだけど、これは古民家とは関係ない。
suumoのサイトにこんなことが書いてあった。

一般的には、
・伝統的な建築工法である木造軸組工法で建てられている
・茅葺屋根、草葺き屋根、日本瓦葺き屋根、土間、太い柱と梁を持つ
・築年数が50年以上経っている

suumo 古民家

「伝統的な建築工法である木造軸組工法」?
木造軸組工法とは別名「在来工法」で、現在も一般的に利用されている工法。
伝統的な建築工法は一般に「伝統工法」と言うし、何か混同している。
木造軸組工法(在来工法)は、伝統工法に西洋建築のノウハウを入れたハイブリッド。
「在来」とは、「外来」に対する言葉なのでハイブリッドというのはおかしいもかしれないけど、この外来はカナダから入ってきたいわゆる「2×4工法」のことなので、間違っていない。西洋のノウハウを入れただけではなくて、大量に生産するために伝統工法を簡略化したのが現在の在来工法。それなのに古民家の条件なの?
屋根の葺き材が条件となるのはおかしいし(葺き替えたら古民家じゃなくなっちゃう!)、参考にならない。

昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていれば古民家?

「全国古民家再生協会」によると、古民家の定義は以下のようになる。

一般的に古民家とは建築後50年経過した建物とされるが、
一般社団法人全国古民家再生協会での「古民家」の定義は、昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた「伝統的建造物の住宅」すなわち伝統構法とする。

一般社団法人 全国古民家再生協会『「古民家」の定義について』

「昭和25年の建築基準法の制定時」というのが曖昧ではあるけれど、おそらくこう。
江戸時代から明治になって、西洋の建築技術が流入してきた。
このとき、日本の建築界では、従来通りの伝統工法派と、西洋建築派が争い、西洋建築派が勝ったらしい。
それ以来、日本の建築(建築基準法)は西洋建築をベースとしてきた。
建築基準法が制定された以上、法に違反する建築はつくれないので、それ以降の建築は「伝統的」とは言えない。
「日本古来の伝統的な民家」=「古民家」という認識であれば、この「昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた」という定義は半分正しい。
もう半分は、「伝統的建造物の住宅」とも書いている。
昭和25年(1950年)以前であっても、西洋建築は入ってきている。
有名なお雇い外国人「ジョサイア・コンドル」は、明治10年(1877年)に来日し、現在の東京大学工学部で教鞭をとりつつ、明治16年(1883年)には設計した鹿鳴館が竣工している。
つまりこのとき以降くらいには、西洋建築の教育を受けた建築士が設計をした民家も建っているはず。
重要な部分は、「伝統的建造物」の部分となる。

伝統工法なら古民家?

「伝統的建造物」とは「伝統工法で建てられた建造物」のこと。
つまり古民家の条件のひとつは、「伝統工法で建てられた民家」となる。

伝統工法とは。伝統工法の特徴。

伝統工法とは、主に木組みの技術を用いた日本古来の工法。
熟練の職人の手により、金物を使わずに木と木を組み上げる。
伝統工法の民家の特徴を列挙する。

  • 金物を使わず木組みで組む。
    ※在来工法は金物が重要
  • 大きな木で柱と梁を作り構造躯体(骨組み)とする。
    ※壁を構造躯体とする在来工法とは異なる。
  • 石場建て。(基礎石に直接柱を立てる。乗せるだけ)
    ※在来工法は基礎コンクリートの上に土台となる木を寝かせその上に柱を組む。
  • 貫や土壁で柱と柱をつなぐ柔構造とする。
    ※在来工法は構造壁や筋交い、火打ちを用いた剛構造。
我が家の梁組
我が家の石場建て。石の上に柱が乗っているだけ。右側の柱はいわゆる大黒柱で、これが折れたら多分家がぺちゃんこになる
土壁の中身、竹小舞。
土壁撤去のため100年以上ぶりに顔を見せた竹。
撤去しまくった土壁の生き残り。
我が家の土間部分の土壁。

以上が主要な伝統工法の特徴。
ほかに、

  • 屋根は、瓦葺き、茅葺き、藁葺き、こけら葺きなど
  • 土間がある

これらの特徴があれば、伝統工法と言っていいと思う。
もちろんリノベーションで土壁を撤去したり、耐震のために金物を追加したりしても「伝統工法で建てられた」ことに変わりはない。
※下手に金物を入れると免震性が・・という主張と「古民家であるかどうか」はここでは関係がない。

日本建築には、斜めの部材がない。
寺社建築や城郭建築をみても、西洋のような斜めの筋交いは入っていない。
※姫路城も熊本城も現在は耐震性向上のため筋交いで補強されているけど。
個人的にもうひとつ条件を足すのであれば

  • 筋交い等斜めの部材がない

ことかなと思う。

「古民家」定義のまとめ

全国古民家再生協会さんの定義は、さすがによく練られている。
「昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた」だけを条件とすると、西洋建築まで含まれてしまうし、
「伝統工法」だけを条件とすると、現在建てられている「伝統工法による民家」まで「古民家」になってしまう(古民家民家は上記条件を満たしていないと思うから対象外)。
※現在でも、上記条件を満たした伝統工法の民家を建てることはできるそうです。お金と労力をたっぷり使えば。。

1点だけほんの少し納得できない点は、「昭和25年の建築基準法の制定時」。
たしかに、法制定によっていろいろな制限ができて、100%伝統工法で建てることは難しくなったけど、不可能ではないし、伝統工法という条件は別で出ているので、「古」の条件として「昭和25年」が正当であるのかどうか少し疑問が残る。
でも、「令和に建てられた民家」まで古民家にするわけにはいかないだろうし、どこかで線を引く必要があり、その線の位置で一番しっくりくるのが「昭和25年」だったんだと思う。

もう1点邪推をすると、昭和25年は敗戦後5年が経過し、戦後混乱期を乗り切り、朝鮮戦争特需で経済が上向きはじめたとき。
1954年からは後に高度経済成長期と呼ばれる好景気が訪れ、住宅需要が非常に高まったとともに、大量生産・大量消費時代となり、できるだけコストをかけずに住宅を大量につくる必要があった。
一方、耐震性や建材の選定についてはまだまだ未熟で、言ってしまえば「粗悪な民家」が大量生産された時代でもある。
このような民家を「古民家」から除外したいと思うのは、納得できる理由だと思う。

個人的には、「昭和」に対して「古(いにしえ)」という字を当てるのが少し早い気もしていて、「大正以前」あるいは「明治以前に建てられた」としてもいいように思う。
(古建築や寺社仏閣が好きだと、室町ですら「新しい、最近」と感じてしまうので、明治に「古」をあてるのも少し違和感を感じるけれど・・)

まとめると、古民家の定義は、

昭和25年以前に伝統工法によって建てられた民家

あるいは

明治以前に伝統工法によって建てられた民家

が妥当。

ちなみにうちは、明治築で伝統工法なので立派に古民家です。
「古民家」の呼称になんのこだわりもないし、どうでもいいけど。。

ついでに、民家とは、広辞苑によると

みん‐か【民家】
人が住む家屋。庶民の住宅。人家。民屋。

広辞苑 第七版 (C)2018 株式会社岩波書店

「古ー民家」の「民家」の部分は、とくに争いがないかなと思う。

※アイキャッチ画像はイメージです(東京小金井の江戸東京たてもの園内で撮影)。

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