野犬と暮らす

ひとりめ、トライアルスタート

  ひとりめ、トライアルスタート

1度目のワクチンを打ち、薄茶ちゃんが先陣を切ってトライアルに出た。
柴犬風の美人でマイペースな性格もあり、お申し込みも多かった。目がつぶらで優しく、ハンナに一番似ている。

獣医さんや庭遊びでドライブには慣れているはずなのに(山口から1,000kmの移動もあった)いつもとは違う雰囲気と緊張もあって、初めて車酔いをする。滝のように垂れるヨダレを拭いて、嘔吐を片付けて水を飲ませた。

ゆっくりゆっくり休みながら、少し予定よりも遅れて到着。里親さんは心配をしながらも温かく迎えてくださる。

小さな女の子と、高校生の男の子がいるご家庭で、末っ子として仲間に入れてもらえそうだ。始めのお世話は、春休みに入るお兄ちゃんが担当。

夫の膝にばかり乗って様子を伺っていたものの、だんだんと場にも慣れて尻尾が上がり、探検を始めた。これなら大丈夫そう。

大きなケージもその場で届き、お願いしていた銘柄のごはんもおもちゃも用意されていて、ご家族の歓迎が伝わる。
「トライアル時のお願い」にサインをいただき、私たち夫婦と、団体さんの都心エリアでの協力ボランティアさん計3名はお宅を失礼した。

可愛がられてほしい。
ただ、大事に可愛がられて幸せになってくれさえすれば、私たちのことは忘れてしまって構わない。

家に帰るとハンナは一人減ったことに気付いている様子で、じっと私たちを見ていた。
ごめんね。ハンナごめんね。きっとまた会えるよ。

こぶちゃんたちはいつも通り大騒ぎで団子になりプロレスをして、欠員を感じさせない。気付いてもいないかもしれない。健やかですばらしい。
この頃はブヒブヒ言いながらも、時々ワン!と吠えるようになってきた。生意気でよろしい。

翌朝、いつも通りブラッシングをする夫が、「間違えてシートを4枚出しちゃった」と、ぽつりと寂しそうに言った。
寂しさは後からやってくる。
送り出した時は、寂しさよりも安堵と幸せを願う気持ちが上回って、不思議と涙が出なかった。

この次二人目がトライアルに出ると、大分減った感じが強くなるだろう。ハンナはどう思うだろうか。

後日、薄茶ちゃんは「プリンちゃん」という名前をもらったと知らせをいただいた。
プリンちゃん!

野犬と暮らす

記事全体の中から前後の記事

同じカテゴリー[ 動物たち ]の前後の記事

同じシリーズ[ 野犬と暮らす ]の前後の記事

同じ著者[ 妻執筆 ]の前後の記事